更新日:2015年07月05日00:17:56
2009平成21年度夏発行 恵友新聞 理事長
【試行錯誤こそが学びのポイント】
園医・理事長 石川経子
脳科学者の茂木健一郎さんによれば、学びには『脳のメカニズム上、ドーパミンによる強化学習が最も効果的である』との事です。ドーパミンとは、人が嬉しかったり楽しい時や喜ぶ時に脳内で放出される報酬系の神経伝達物質です。
『好きこそものの上手なれ』ということわざが示すとおり、自分の好きな事をしている時は楽しく、多少の苦労や辛さも容易に乗り越えられる事は、想像に難くないでしょう。
ところがこの物質は、報酬がある時のみならず不確実な状況においても放出される事が、近年分かってきました。その大きな理由として、人は不確実さを伴う体験からこそ様々な事を学習する事が出来るからではないか、と考えられています。
例えば我々は、社会的対人関係において(自分の意のままにならない)他人という不確実な存在を通して、多くの事を学びます。
コミュニケーションには、ドリルやパズルの様に決まった答えや解き方などありません。自分なりに工夫して様々な試行錯誤を重ね、徐々に他人との適切な距離感覚を獲得していくのです。
幼稚園でも日々子どもたちは、子ども同士の対等な関係を通して、大人との関係では得られない人間関係の技能や学ぶ姿勢そのものを身につけています。